若林晃一税理士事務所

図解で簡単にわかる! 相続税の計算方法をイチから解説します

相続税の計算を理解すれば、どんな相続対策をすべきか分かってきます!


みなさんは相続税の申告書を作成したことはありますか?

おそらくほとんどの人が作成したことがないと思います。

相続税の申告書を作成しなけばならないのは相続で財産をもらう時なので、相続税の申告書を作成するのは両親が死亡した時か、配偶者が死亡した時ということがほとんどだと思います。

つまり一生のうち相続税の申告書を作成しなければならないというのは数回ということになります。

そのため、多くの人はこう考えていると思います。

相続税の計算はよく分からない!

しかし率直に言うと相続税の計算はそこまで難しいわけではありません。

特に計算構造が複雑な法人税の計算に比べると簡単であるというのが実際のところです。

ここでは相続税の計算方法を図解を使って分かりやすく解説します。

相続税の計算方法がわかると、相続税の対策をするときにどのような相続対策をすればいいのか、どのくらいの相続対策をすればいいのかということがわかってきます。

節税商品をすすめる様々な人の声に惑わされることなく、自分で相続税対策を考えるためにも、この記事で相続税の計算の流れを理解してください!

相続税を計算する7つのSTEP

相続税は次の7つのSTEPで計算します。

STEP1 財産をもらった人ごとに相続財産の金額を集計します

STEP2 STEP1の各人の相続財産の金額を合計します

STEP3 相続税の基礎控除額を計算します

STEP4 「STEP2で計算した各人の相続財産の金額の合計額」から相続税の基礎控除額を控除して課税遺産総額(相続税が課税される金額)を計算します

STEP5 課税遺産総額をもとに相続税の総額(財産をもらった人全員で負担する相続税額)を計算します

STEP6 相続税の総額を実際に財産をもらった割合により按分して 「各人の算出税額」を計算します

STEP7 各人の算出税額から各種控除額を控除して「各人の納付税額」を算出します

STEP1からSTEP7までを図解にしたのが下記の図です。







この図だけではわかりにくいと思いますので、父が死亡して、相続人がそれぞれ次のように財産を相続した場合を例にそれぞれのSTEPを解説したいと思います。


おすすめなのですが、このあとの解説を読み終わりましたら、先に紹介しました相続税の計算過程の図をもう一度見返してください。

相続税の計算方法について理解が深まると思いますよ!

STEP1 財産をもらった人ごとに相続財産の金額を集計します

財産をもらった人ごとに相続財産の金額を集計すると次のようになります。


なお、この例では預金、指輪、株式、車を相続していますが、その他に相続財産に該当するものとしては土地や建物などの不動産、絵画などの骨とう品、機械や棚卸資産などの事業用の資産、会社や他人・親族への貸付金などがあげられます。

これらの財産については相続が発生した際に、相続人の間で話し合いをしてどのように分けるかということを決定します(この話し合いを遺産分割協議と言います)。

このように遺産分割協議をする財産のほかに、遺産分割協議の対象とはなりませんが相続が発生すると相続人が取得することとなるため、相続税の計算上相続財産として取り扱うものがあります。

主なものとして生命保険金が該当します。

相続税ではこれらの財産について相続が発生した日の時価で評価して相続税を課税します。

相続が発生した日の時価は、イメージ的には換金した場合の金額ということになるのですがそれがいくらになるのかを判定するのは難しい財産(不動産や株式など)もあるので、国がどのように評価するのかということについて一定の指針を定めていて、その指針に基づいて相続が発生した日の時価を計算します。

また、相続財産の金額を集計するにあたり、亡くなった人に借金がある場合の取り扱いや土地を時価より低い金額(最大80%引き!)で評価できる特例などがあるのですが話を分かりやすくするためにここでは取り上げないこととします(あらためて別の記事で解説します)

STEP2 STEP1の各人の相続財産の金額を合計します

STEP1で集計した各人の相続財産の金額(母:5,000万円、長男:1億1,000万円、長女:4,000万円)を合計すると2億円となります。

STEP3 相続税の基礎控除額を計算します

相続税では亡くなった人が残した財産すべてに相続税を課税するのではなく、一定の金額を超えた部分に対して相続税が課税されます。

この一定の金額が基礎控除額であり、次の算式で計算されます。

3,000万円+600万円×(法定)相続人の数

相続人の数の前に(法定)とついていますが、この点について考慮しなければならない場合は少ないので、基本的には「相続人の数」と考えてください。

今回の例では、相続人は母・長男・長女の3人です。

そのため基礎控除額は

3,000万円+600万円×3(人)=4,800万円 となります。

なお、基礎控除額は 3,000万円+600万円×(法定)相続人の数 で計算されるため、相続人が多いほど基礎控除額は多くなり、結果、相続税が少なくなります。

このあとにも相続人が多いほうが相続税が少なくなるという要素がでてきます。

是非ここでは、「相続人が多いと相続税は少なくなる」という関係をおさえてください。

なお、基礎控除額について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
超えたら相続税がかかる! 相続税の基礎控除について解説します

STEP4 課税遺産総額(相続税が課税される金額)を計算します

STEP2で計算した「各人の相続財産の金額の合計額」からSTEP3で計算した「相続税の基礎控除額」を控除して、課税遺産総額(相続税が課税される金額)を計算します。

2億円(各人の相続財産の金額の合計額)ー4,800万円(相続税の基礎控除額)=1億5,200万円(課税遺産総額=相続税が課税される金額)

STEP5 相続税の総額(財産をもらった人全員で負担する相続税額)を計算します

相続税の税率は次のようになっています。


STEP4で計算した課税遺産総額に上の表の税率をかければ相続税額の計算終了・・・というわけにはなりません。

相続税の計算で一番わかりにくいところなのですが、STEP4で計算した課税遺産総額を各相続人が仮に法定相続分で相続したものとして各相続人に分配します。

この例では母の法定相続分は1/2、長男と長女の法定相続分は1/4ですので、課税遺産総額1億5,200万円のうち母に分配される金額は7,600万円、長男と長女にそれぞれ分配される金額は3,800万円となります。



この分配されたそれぞれの金額に相続税の速算表の税率をかけて、そのあと控除額を引きます。




母の税額1,580万円と長男の税額560万円、長女の額560万円を合計した2,700万円が相続税の総額(財産をもらった人全員で負担する相続税額)となります。


(追加情報:相続人が多くなると相続税の総額は少なくなります)

課税遺産総額は今回と同じ1億5,200万円で、相続人が母・長男・長女の3人ではなく、母・長男・長女・次男・次女の5人であった場合に相続税の総額がどうなるのかということについても考えてみたいと思います。

この場合、長男・長女・次男・次女の課税遺産総額に法定相続分をかけた金額はそれぞれ1,900万円となります(母の7,600万円は変わりません)。



相続税の総額(財産をもらった人全員で負担する相続税額)は2,520万円となり、相続人が母・長男・長女の3人の場合と比べて180万円減少しています。



これは、相続人が多くなると「課税遺産総額に法定相続分をかけた金額」が少なくなるため(今回の例では長男・長女は3,800万円から1,900万円になりました)、適用される税率が低くなったことによります(今回の例では長男・長女に適用されていた税率が20%から15%になりました)。


先ほど相続人が増えると基礎控除額が増えて相続税額が減少するということを解説しましたが、それだけでなく適用される税率も低くなるのでさらに相続税額は少なくなるということになります。

STEP6 相続税の総額を実際に財産をもらった割合により按分して 「各人の算出税額」を計算します

相続税の総額は財産をもらった人全員で負担する相続税額です。

相続税の総額を実際に財産をもらった割合で按分することにより、「各人の算出税額」を計算します。

財産をもらった割合は

各人の相続財産の金額(STEP1)÷各人の相続財産の金額の合計額(STEP2)

で計算されるので、母・長男・長女の算出税額は次の通りになります。

STEP7 各人の算出税額から各種控除額を控除して「各人の納付税額」を算出します

STEP6の各人の算出税額が基本的に納付すべき相続税額となるのですが、財産をもらった人ごとに個別に税負担を軽減すべき要素があるので、算出税額から各種控除額を控除して納付すべき相続税額を算出します。

この各種控除額の中で最も税負担を軽減できるのが「配偶者の税額軽減」です。

配偶者の税額軽減とは配偶者が取得した財産のうち1億6,000万円までの財産については相続税を課税しないというものです。

(亡くなった人の財産が大きい場合は1億6,000万円以上の財産についても相続税が課税されないこともあります)

今回の例では配偶者である母が取得した財産は5,000万円で1憶6,000万円に満たないので配偶者の算出税額675万円は課税されないこととなります。

長男・長女に各種控除額がないとすると、最終的に母・長男・長女が納付する相続税額は次のようになります。

配偶者が多く相続するのが有利とは限りません

ところで1億6,000万円まで配偶者が取得した財産については相続税が課税されないのであれば、1憶6,000万円までは配偶者が財産を取得すれば相続税の負担が減って有利だと考える人もいると思います。

例えば今回の例で配偶者である母が1億6,000万円を取得して、残りの4,000万円を長男と長女で取得をした場合、母と長男、長女の相続税を合計すると540万円であり、先ほどの分け方の場合の2,025万円(=1,485万円+540万円)より大幅に税負担が減ります。


しかし、実はこのような分け方は長い目で見ると一番損するということがあります。

なぜなら1億6,000万円まで目一杯に財産を取得した配偶者(今回の例では母)がもともと多額の財産を保有していた場合には、母が死亡した場合にはもともと保有していた多額の財産と相続で取得した財産(1億6,000万円)の合計額に相続税が課税されることとなります。

相続税の税率は財産が多いほど高くなることから母が死亡した時に適用される税率が高くなり、相続税額が高くなります。


そのため、父の相続時の相続税が少なかったとしても、母が死亡した時の相続税の負担が大きいため、父死亡時の相続税と母死亡時の相続税の合計額は増えてしまうということになります。

このように夫婦のどちらかが死亡した後、残されたもう一人が死亡するということを二次相続という言い方をします。

生前相続対策においても相続税の申告においても二次相続を考慮しないと税負担は非常に大きくなってしまいます。

配偶者の税額軽減や二次相続については詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。図解を使って分かりやすく解説しています!
配偶者は1億6,000万円まで相続税が非課税 実は二次相続まで考えないと損をします!

まとめ

相続税の計算方法を解説しましたがいかがでしょうか?

今回の記事を読めば、どのような財産をもっているかをリストアップすれば大まかな相続税の計算はできるのではないでしょうか?

相続税の計算ができれば、どのようにすれば相続税を節税できるのかということが見えてくると思います。

また財産のリストアップは争族対策を考えるうえでも必要不可欠です。

当事務所では節税対策や争族対策を両立させる生前相続対策の立案や実行のサポートに取り組んでいます。

ご関心のある方はお気軽にご相談ください。

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