若林晃一税理士事務所

住宅取得等資金贈与は非常に有効な生前相続対策!ただし注意点もあります

住宅取得等資金贈与の非課税とは?

住宅取得等資金贈与とは、父母や祖父母などからの「住宅を新築・取得(購入)・増改築(以下「新築等」と言います)する資金」の贈与を言います。

住宅取得等資金の贈与で一定の要件を満たすものについては、贈与された金額のうち最大3,000万円、贈与税が課税されないこととされていて、この制度は「住宅取得等資金贈与の非課税」と呼ばれています。

「住宅取得等資金贈与の非課税」を正しく活用した場合、通常の生前贈与より多額の財産を税負担なく子どもや孫に渡すことができるので、相続税の節税効果は大きいものとなります。

(生前贈与をすることによる相続税の節税効果についてはコチラ)
生前贈与で効果的な相続対策を!その仕組みを解説します
贈与税を払って生前贈与をした方がお得な場合があります

制度を利用することによるデメリットも少ないので、生前相続対策としてお薦めできる制度です。

この記事では、「住宅取得等資金贈与の非課税」の内容と制度を利用する上での注意点についてお伝えします。

贈与税が非課税となる限度額

住宅取得等資金贈与をした場合に非課税となる限度額は、「新築等の対価に含まれる消費税の税率」「省エネ等住宅(※)に該当するか否か」「新築等の契約日(贈与契約日ではありません)によって異なります。

(※)省エネ等住宅とは、次のいずれかの要件を満たすことが証明された家屋を言います。
①一定の省エネ水準を満たしている
②一定の耐震基準を満たしている
③一定のバリアフリー性を満たしている

1 下記2以外の場合の非課税限度額


2 家屋の新築等の対価に含まれる消費税の税率が10%の場合の非課税限度額

令和元年(2019年)10月1日に消費税の税率は10%に上がるとされていますが(令和元年8月16日現在)、契約日が令和元年(2019年)10月1日以降となる場合に必ず上記2の限度額が適用されるわけではありません。個人間の売買では原則として消費税はかかりませんので、上記1の限度額が適用されるのが通常です。

また、住宅取得等資金贈与の非課税は、基礎控除の110万円とあわせて使うことが可能なので、上記の表の金額に110万円を加算した金額は贈与税が課税されないこととなります。

(例)
父親から住宅取得等資金として3,000万円の贈与を受ける。
令和元年(2019年)10月31日に省エネ等住宅に該当しない家屋の売買契約(対価に含まれる消費税の税率は10%)を締結。

この場合、贈与税額は次のようになります。

3,000万円ー2,500万円ー110万円=390万円
390万円×15%ー10万円=485,000円

(参考) 父親からの贈与(特例贈与)の場合の速算表 

住宅取得資金贈与の適用を受けるための要件は?

「住宅取得等資金贈与の非課税」の適用を受けるためには次の要件を満たす必要があります。

1 受贈者(もらう人)の要件

(1)(原則として)贈与を受けた時点で日本国内に住所がある。

(2)血がつながっている父母・祖父母などから住宅取得等資金の贈与を受けている。
(配偶者の父母や祖父母(義理の父母・祖父母)からの贈与については適用されません。ただし、配偶者の父母や祖父母と養子縁組をしている場合は適用可能です)


(3)贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である

(4)贈与を受けた年の所得税の合計所得金額が2,000万円以下である

(5)贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の新築等(新築、取得又は増改築)(注1)(注2)(注3)をしている。

(注1)住宅用家屋の「新築」の場合については、贈与の年の翌年3月15日において屋根があり、土地に定着した建造物と認められる場合には(この制度を適用できる)新築の状態にあると認められます。
 
住宅用家屋の「増改築」の場合については、贈与の年の翌年3月15日において増改築をした部分に屋根があり、それまであった家屋と一体となって土地に定着した建造物と認められる場合には(この制度を適用できる)増改築された状態にあると認められます。
 
一方、住宅用家屋の「取得」(建売住宅や分譲マンションの購入などが該当します)については「新築」「増改築」と異なり、3月15日までに完成引き渡しを受けなければこの制度を適用することはできません。

(注2)「住宅用家屋の新築等」には「住宅用家屋の敷地の取得」を含むとされているため、住宅取得等資金により住宅用家屋の敷地を取得することも可能です。
 
ただし、住宅取得等資金の贈与を受けた人が住宅用家屋を所有(共有持分を有する場合を含みます)することとならなければ、住宅取得等資金贈与の非課税を適用することができないとされています。
 
見逃しがちな要件なので気を付けてください。

(注3)贈与された住宅取得等資金は「住宅用家屋の新築等」に充てた場合に非課税となります。「住宅ローンの返済」に充てた場合は非課税とならないので注意が必要です。

(6)贈与を受けた年の翌年3月15日までに新築等した住宅用家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれる(注)。

(注)贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、住宅取得等資金贈与の非課税の適用を受けることはできません。この場合には贈与税の修正申告をして贈与税を納付することとなります。

(7)配偶者や親族、同族会社などからの家屋の取得あるいはこれらの方の請負による家屋の新築・増改築ではない。

(8)平成26年(2014年)分以前の贈与税の申告で「住宅取得等資金贈与の非課税」の適用を受けていない。

(9)贈与税の申告期限(贈与した年の翌年3月15日)までに贈与税の申告書を提出する。

この制度の限度額の範囲内で住宅取得等資金の贈与をした場合贈与税額は0円となりますが、その場合でも期限内に贈与税の申告をする必要があるのでご注意ください(1日でも遅れたら適用できません)。

(図解) (5)(6)(9)の期限のまとめ



2 住宅の要件

(1)新築の場合

新築をした住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が 50 ㎡以上 240 ㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者(もらう人)の居住の用に供されるものであること。

(2)取得(購入)の場合

①及び②の要件を満たす必要があります。

①取得をした住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者(もらう人)の居住の用に供されるものであること。

②取得をした家屋が次のいずれかに該当すること。

(イ)建築後使用されたことのない家屋

(ロ)建築後20年以内(耐火建築物である場合には建築後25年以内)の家屋

(ハ)耐震基準を満たす住宅

(3)増改築の場合

①及び②の要件を満たす必要があります。

①増改築をした後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者(もらう人)の居住の用に供されるものであること。

②増改築の工事に要した費用の額が 100 万円以上であること。

(注)増改築の工事の部分に居住の用以外の用に供される部分がある場合には、増改築の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に充てられていなければなりません。

生前贈与加算は?

生前贈与をしても相続対策として有効でない場合があります。生前贈与加算が適用される場合です。

生前贈与加算とは、

相続などにより財産をもらう人が、被相続人(死亡した人)から、死亡の日からさかのぼって3年以内に、贈与によりもらった財産がある場合には、その贈与によりもらった財産の価格を足した金額を相続財産の価格とする

という制度です。

生前贈与加算について詳しくはコチラ

住宅取得等資金の贈与の非課税の適用を受けた財産については、死亡の日から3年以内に行われたものであっても生前贈与加算は適用されず、住宅取得等資金の金額を相続税の課税価格に加算する必要はありません。

確実に生前贈与による相続税の節税効果が見込める制度と言えます。

小規模宅地等の特例が使えなくなる?

実は、住宅取得等資金の贈与をしないほうが有利な場合があります。

それは、住宅取得等資金の贈与をすることにより「小規模宅地等の特例」を適用できなくなる場合です。

小規模宅地等の特例とは、ざっくり言うと「亡くなった人が住んでいた自宅の敷地は評価額の2割(=8割引き!)の金額で相続したものとして相続税の計算をしてもいいですよ」という制度です。

仮に評価額4,000万円の土地について小規模宅地等の特例の適用を受けると、800万円の評価額(3,200万円の評価減)で相続したものとして相続税の計算をすることができるので、場合によってはかなりでお得になる特例です。

小規模宅地等の特例の適用を受けられるのは原則として、「配偶者」と「亡くなった人と同居していた親族」です。

ただし、「配偶者」「亡くなった人と同居していた親族」どちらも存在しない場合には、「亡くなった人と別居していた親族(以下「別居親族」と言います)」が亡くなった人の自宅の敷地を相続した場合でも小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

そして、亡くなった人が住んでいた自宅の敷地を相続した別居親族が小規模宅地等の特例の適用を受けるためには次の要件を満たさなければならないとされています。

亡くなった人が住んでいた自宅の敷地を相続した別居親族が、相続開始前3年以内に、その別居親族本人、その別居親族の配偶者、その別居親族の三親等内の親族などが所有する家屋(亡くなった人の自宅を除きます。)に居住したことがないこと。

「住宅取得等資金贈与の非課税」を適用して別居の子どもが住宅を取得した場合、子どもは「別居親族本人が所有する家屋」に居住していることになるため、相続税の申告において「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができないこととなります。

「小規模宅地等の特例」により減額される敷地の評価額が大きい場合は、「住宅取得等資金の贈与」は行わず、子どもは賃貸住宅に住み続けるほうが有利ということも大いにあり得ます。

「住宅取得等資金の贈与」を考えている方は、将来の「小規模宅地等の特例」の適用についても考慮したうえで実行してください。

まとめ

「住宅取得等資金の贈与」は「小規模宅地等の特例」の適用ができなくなるかもしれないという点には注意が必要ですが、基本的には税負担を軽減できるいい制度です。

ただし、住宅取得等資金で費用をまかなえない場合は、住宅ローンを借りる、親が資金を出して共有持分を所有するなど様々な選択肢があります。

当事務所ではお客様の状況に応じてどのようにすれば節税を図れるのか提案をいたしますので、是非お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら

PAGE TOP